病気のご紹介

不正出血

ホルモンの異常や様々な病気により月経以外に性器から出血することを不正性器出血といいます。排卵期に起こる中間期出血など病気ではないものもありますが、なかには重大な病気の症状のこともあるので注意してください。

不正出血を起こす病気には以下のようなものがあります。

  1. 炎症によるもの:病原菌の感染、萎縮性腟炎、子宮内膜炎など
  2. ホルモン異常によるもの:卵巣機能不全、月経異常など
  3. 良性の腫瘍:子宮頸部または内膜のポリープ、子宮筋腫など
  4. 子宮腟部びらん:若い女性では一般的に見られる状態ですので、病気とはいえませんが子宮頸がんの初期のこともありますので注意が必要です。
  5. 悪性の腫瘍:子宮頸がん、子宮体がん、卵巣腫瘍、子宮肉腫、腟がんなど
  6. 妊娠に関連するもの:流産、異所性妊娠など

不正出血を起こす病気は数多くあります。自分ではどこからの出血かわからないことが多く、実は尿や肛門からの出血のこともあります。不正性器出血では重大な病気が隠れていることもあります。年齢に関わりなく、是非、産婦人科を受診してください。

萎縮性腟炎・閉経後性器尿路症候群

萎縮性腟炎とは、女性ホルモン(エストロゲン)が低下によって、腟や膀胱、尿道組織の萎縮が起こり、その結果、様々な症状が出現するものです。

その症状は、腟の乾燥感・外陰部の痒みや刺激症状・性交痛といった「女性性器の症状」と、頻尿や尿意切迫感といった過活動膀胱などの「泌尿器の症状」です。
60歳以上の健康女性の約半数が何らかの腟萎縮の症状がみられ、閉経後女性に日常的に認められている症状ですが、実際に治療を受けているのは25%以下とも言われています。
原因は女性ホルモンの低下ですが、更年期や閉経期のみならず、出産後の授乳期でも起こるとされています。また、手術による卵巣摘出や、乳がんや子宮内膜症のホルモン治療、さらに、稀ではありますが低用量ピルの内服も原因となります。

治療の中心はエストロゲン製剤です。全身投与(貼り薬や飲み薬など)と腟内投与(腟錠)との治療効果には差がないとされていますが、乳がんや子宮内膜症に対しては女性ホルモン剤は禁忌あるいは慎重に投与されるべき薬剤となります。

高齢化や生活の質(QOL)に対する意識が高まるなか、2013年、北米閉経学会など4つの学会から共同声明として、「閉経後性器尿路症候群(Genitourinary syndrome of Menopause; GSM)」という、単なる腟の疾患としてではなく、泌尿器症状も含む、包括的な疾患概念が提唱されました。

当院では、単なる「萎縮性腟炎」としてだけではなく、このGSMの概念のもと、女性のQOLの向上にできればと考えています。

ひとりひとりの症状や体調に合わせた、女性ホルモン剤の投与はもちろんのこと、女性ホルモンを使用しない治療として、漢方薬や、炭酸ガスフラクショナルレーザー装置を用いた「モナリザタッチⓇ」を導入しています。このレーザー治療は、ホルモン剤を一切使用せずに多くの方が短期間で症状が改善し、非常に満足度の高い治療法です。当院では2016年6月に導入して、すでに数多くの方がこの治療効果に満足ししていただいています。詳しくは「日帰り手術」のページをご覧ください。
どんな些細な症状も、決して恥ずかしがることなく、ご相談下さい。

参考文献:産婦人科診療ガイドライン「婦人科外来編 2014」、ACOG:Guidelines for Women’s Health Care 4th edition、Portman DJ, Gass ML, Menopause. 2014など

子宮筋腫

子宮筋腫は良性の腫瘍ですから、それ自体が生命を脅かすものではありません。しかし放置しておきますと10kgを超えるような大きさまでになることもあります。女性ホルモンによって筋腫が大きくなり、閉経後には小さくなります。
複数個できることが多く、数や大きさはさまざまで、大きさやできた場所によって症状が異なります。できた場所によって、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)に分けられています。

代表的な症状は月経量が多くなることと月経痛です。その他の症状としては、月経以外の出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)等があります。お腹そのものが大きくふくれてくることもあります。

症状は、できた場所によってまちまちですが、子宮の内側にできた筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。逆に子宮の外側にできた筋腫は相当大きくなっても症状がでません。若い人では不妊や不育症の原因になることもあります。小さな筋腫は見つけにくいこともありますが、外来での一般的な診察と超音波検査で簡便に診断することができます。
大きな筋腫や手術を考える場合にはMRI検査が有用です。大きな筋腫では約0.5%に悪性の子宮肉腫が含まれています。子宮肉腫と子宮筋腫を見分けることは難しく、大きさや患者さんの年齢、大きくなるスピード、MRIの検査所見などで判断します。

治療法は、できた場所や症状によって異なってきますが、手術と薬があります。手術では子宮を取ってしまう子宮全摘術と、筋腫だけ取る筋腫核出術があります。将来子供がほしい人や子宮を残す希望の強い人では筋腫核出術を実施します。
また、最近はこれらの手術に腹腔鏡(内視鏡)を使って行う施設も増えてきています。薬の治療では閉経状態にしてしまう治療(偽閉経療法)が行われます。

治療薬には毎日の点鼻薬と4週間に1回の注射薬の2種類があります。薬の治療で筋腫がなくなってしまうことはなく、筋腫を小さくするために手術前に一時的に使用するか、閉経に至るまでの一時的治療として行われるのが一般的です。

子宮内膜症

子宮内膜またはそれに似た組織が、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患が子宮内膜症です。20~30代の女性で発症することが多く、そのピークは30~34歳にあるといわれています。

子宮内膜症は女性ホルモンの影響で月経周期に合わせて増殖し、月経時の血液が排出されずにプールされたり、周囲の組織と癒着をおこしてさまざまな痛みをもたらしたりします。また、不妊症の原因にもなります。

子宮内膜症ができやすい場所として、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などがあげられます。稀ではありますが肺や腸にもできることがあります。

症状の代表的なものは「痛み」と「不妊」です。痛みの中でも月経痛は子宮内膜症の患者さんの約90%にみられます。
この他、月経時以外にも腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などがみられます。こうした症状は20~30歳代の女性に多く発症し、加齢による女性ホルモン分泌の減少を境におさまります。また、妊娠を希望する生殖年齢の女性では「不妊」が問題となります。妊娠の希望のある内膜症患者さんの約30%に不妊があると考えられています。

治療は、大きく分けて薬と手術があり、症状の種類や重症度はもちろん、年齢、妊娠の希望などを総合的に判断して最適な治療法を選択していきます。

痛みに対してはまず、鎮痛剤を使用します。効果が得られない時はホルモン量の少ないピル(低用量ピル)を用います。視床下部ホルモンであるGnRHの拮抗剤(アゴニスト)や黄体ホルモン剤(ジエノゲスト)などが用いられることもあり、女性ホルモンの分泌を抑えたり直接病巣に作用させたりして症状を緩和させます。
卵巣の内膜症性のう胞(チョコレートのう胞)などの病巣部がはっきりしている場合は、手術を考慮します。妊娠を望んでいる場合は、病巣部のみを切除して子宮や卵巣の正常部分を残す手術を選択します。妊娠を望まない場合には、病巣のみの摘出に加えて、子宮、卵巣および卵管などを摘出することもあります。

子宮内膜症は、どの治療法を選択しても将来的に再発する頻度が高いことや、卵巣の子宮内膜症性のう胞は長い年月を経ると稀ではありますが癌化することなどから、長期にわたる経過観察が必要です。

子宮頸がん

子宮の下部の管状の部分(子宮頸部)に生じるがんを子宮頸がんといいます。

子宮頸がんは子宮がんのうち約7割程度を占め、20歳代の若い女性にも徐々に増えてきており、最近では30歳代後半がピークとなっています。

子宮頸がんは通常、早期にはほとんど自覚症状がありませんが進行するに従って異常なおりもの、月経以外の出血(不正出血)、性行為の際の出血、下腹部の痛みなどが現れてきます。

子宮頸がんの初期は症状がないため、子宮頸がん検診を受診することが何よりも大切です。検診では、子宮の出口である頸部を専用のブラシでこすって細胞を集め、顕微鏡でがん細胞を見つける細胞診検査を行います。
出血などの症状がなくても、20歳を過ぎたら、2年に1回子宮頸がんの検診を受けることが勧められています。

子宮頸部の細胞診検査の結果、異形成やがんの疑いが強い場合には、より詳しい検査としてコルポスコピーという顕微鏡を用いた組織診(生検)を行います。これにより異形成や上皮内がん、または進行したがんであるかの診断を行います。
もし、子宮頸がんと診断されたら、次に正確な病気の拡がりを、内診、各種画像検査(CT、MRI等)、内視鏡検査などを用いて子宮の周囲にある臓器、リンパ節、他の臓器への転移を検査します。

子宮頸がんの前状態である、子宮頸部異形成や上皮内がん(初期のがん)であるならば、子宮を残すことが可能です。また、子宮頸部の組織へ入り込んでいる場合(浸潤がん)も、軽度で早期の状態であれば比較的治療成績の良いがんです。

子宮頸がん検診で早期発見し、早期に治療することが大切な病気といえます。

子宮頸がんワクチンについて

子宮頸がんが発生しているほとんどの人が、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに感染していることがわかってきており、子宮頸がんの原因とされています。日本人を対象とした調査では、性交経験のある女性の約10%において子宮頸部に、子宮頸がんの高危険群のHPVが検出されました。
たとえHPVに感染しても、2年以内に90%の人は自分の免疫の力でウイルスが排除されますが、10%の人は感染が長期間持続し、がんの前の段階である異型細胞が増殖します。
この感染が持続し、自然に治癒しないグループ(高危険群HPV)が子宮頸がんに進行するといわれています。

近年ではこのHPVの感染を予防することにより子宮頸がんの発症を防ぐワクチンの接種が、各国で広がってきています。性交渉を経験する前の10歳代前半を中心に接種が推奨されています。日本でも平成21年12月に承認され接種可能となりました。

接種は6ヶ月の間に合計3回必要となります。このワクチンは生ワクチン(毒性を弱めたウイルス)ではありませんので、接種によって病気を引き起こすことはありません。
ちなみに、HPVワクチンは、HPV感染を予防する効果はあるものの、異形成やがんを治療するものではありません。

また、このワクチンによる副反応に関する問題もあります。様々な憶測や不十分な情報をもとにメディアによって報道されて、多くの方が不安を募らせています。重い副反応とは、アナフィラキシー(強いアレルギー反応、96万接種に1回)、ギランバレー症候群(430万接種に1回)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM、430万接種に一回)、複合性局所疼痛症候群(CRPS、960万接種に1回)などがありますが、このワクチンと明確な因果関係があるとされているものではありません。

おもに社会的な理由から現在は積極的に推奨されていませんが、現在も女子中学生などに対して公費負担制度で接種することが可能です。また、HPVは、その感染力の強さのため、コンドームを用いても予防することはできません。安心して接種できるには、いくつかの問題を解決する必要がありますが、一人でも多くの女性が子宮頸がんの心配から解放されることを願っています。

子宮頸部異形成

子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階(前がん病変)です。

子宮頸がん検診(細胞診)で異常が判明すると、コルポスコピーという顕微鏡を用いた組織診(生検)を行います(前述)。
子宮頸部異形成は、その病変の程度によって軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3つに分類されます。

子宮頸部異形成は自覚症状を示さないことが多く、子宮頸がん検診(細胞診)を契機に発見されることが多い病気です。治療しなくても自然治癒(消退)することがあるため、軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)の場合は、直ちに治療するのではなく経過観察することが一般的です。
CIN1やCIN2の場合、約半数の患者さんでは自然治癒するとされています。

一方、高度異形成(CIN3)・上皮内がんや、CIN2が長期に渡って遷延する場合では、治療は必要となります。

治療法は手術療法です。代表的な手術として、子宮頸部円錐切除術と子宮全摘があります。子宮頸部円錐切除術は、病変部位を含む子宮頸部(入り口部分)を円錐形に切除します。

子宮頸部円錐切除術と異形成上皮レーザー蒸散術について

妊娠を希望するなど、子宮を温存する場合の手術として子宮頸部円錐切除術があります。
手術後に摘出した標本を術後に詳しく調べ、追加の治療が必要か判断します。

円錐切除後の妊娠では早産率が8~15%であり, 1.5~3倍高くなるとされています。また、後期流産,早産期前期破水,帝王切開分娩,低出生体重児等が増加することも報告されています。

一方、レーザーなどによる異形成上皮蒸散法は、子宮頸部を切除するのではなく、上皮を熱変成させることで治療するものです。
妊娠を維持するために重要な子宮頸部の大きさに変化がないため、早産率は増加しないという報告が多くされています。

この術式は、円錐切除術に比較して、早産や前期破水といった妊娠に対する影響が少ないものの、病理検査を行うことができず、進行した病変を見落としてしまう可能性もあり、また再発率も円錐切除術に比較すると若干高くなるので、慎重に適応症例を判断する必要があります。

当クリニックの方針として、近いうちに妊娠・出産を希望されている方で、組織診でCIN2までと診断されたもの、そして、CIN3であっても病変部分の範囲がコルポスコピーで確認でき、術後も定期的な受診が可能である場合に限って、CO2レーザーを用いた異形成上皮レーザー蒸散術を行っています。
周産期専門医として、なるべく妊娠や出産に悪影響を及ぼさない治療を選択すべきであると考えているからです。

卵巣腫瘍

卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常では2~3cmぐらいの大きさです。ここに発生した腫瘍が卵巣腫瘍であり、大きいものでは30cmを超えることもあります。

卵巣腫瘍には様々な種類があり、その組織型から良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍に分類されます。

卵巣腫瘍の症状には腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、下腹部痛、頻尿などがありますが、小さいうちは無症状で経過することが多く、大きくなったり腹水がたまったりしてから症状が出現し、時に突然の強い下腹部痛が出現することもあります。

診断の手順としては触診・内診と超音波検査が行われます。また、これらの診察と検査で、良・悪性の診断もある程度可能です。
さらに、詳しく調べる必要があると判断された場合、MRI検査や腫瘍マーカーの測定が行われます。担当医はこれらの結果から総合的に良性腫瘍なのか悪性腫瘍や境界悪性腫瘍なのかを判断します。
しかしながら、その精度には限界があり、最終的には手術で摘出した腫瘍の病理組織検査によって診断が確定します。

治療は手術療法が原則です。手術療法は、良性腫瘍と診断された場合、腫瘍だけを摘出し、卵巣実質を温存する術式が選択されます。

また、最近では多くの施設で体への負担が軽い腹腔鏡下手術が行われています。
境界悪性腫瘍や悪性手術の場合、その種類や拡がり(進行期)によって治療方法が変わります。
抗がん剤などを用いた追加治療が必要となることもあります。

参考資料:日本産科婦人科学会ホームページなど
http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/index.html

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